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生活支援ロボット関連法規の概要
 ここで紹介する内容は、生活支援ロボット実用化プロジェクトの下で、(一財)製造科学技術センターが行った調査研究の報告書「生活支援ロボット関連法及び国際規格概説、(一財)製造科学技術センター 平成21年度(2009)調査研究報告書」の概要紹介を中核としています。同報告書は最終的に「生活支援ロボット関連の法律と制度の調査 II 日本の法制度の調査」としてまとめられ、本サイトに掲載されています。この報告書を以下では法令集と表記します。
1. 法令集について
 法令集では、生活支援ロボットの関連法と国際規格を整理しています。表1に法令集に掲載した法律や制度を示します。法律や制度には、生活支援ロボットの安全性を確保するための規制や基準の他、医療機器の承認審査制度、福祉機器の公的給付制度の対象種目にするための申請制度などがあります。日本では、自動車や車いす等の機械の安全を確保する為に、JIS規格を法律から引用したり、法施行規則や告示等で数値条件を示して安全に関する法的拘束力を高めたり、福祉機械が障害者や高齢者向け福祉制度の貸与種目に認定される条件を設定するなど、様々な方法で安全を確保することが行われています。しかしながら、将来実用化される生活支援ロボットは、自動車の様に道路交通法施行規則で仕様や基準等を具体的な数値で示されたり、車いすのように告示により福祉用具貸与種目としての仕様を定めたりされていません。そこで、現行の法律や制度の活用を容易にするため、現在の法施行規則や告示等が、将来実用化される生活支援ロボットに与える影響を想定して法令集が作成されました。
2. 法令集で扱った法律・制度
 表1は、法令集で扱った法律・制度の一覧です。それぞれの概要を知るには、リンク部をクリックして下さい。また、「3. 法令集における各法律の概要」は各法律と生活支援ロボットとの関係の概要を、法令集から抜粋した例示や事例を用いてまとめたものです。

表1 生活支援ロボット関連する法と制度
所轄省庁 種類 法律や制度の名称 内容
経済産業省 民法 製造物責任法 規制
行政法 電気用品安全法消費生活用製品安全法 基準
厚生労働省 制度 玩具の安全基準とSTマーク 基準
行政法 労働安全衛生法 基準
薬事法 申請
介護保険法 申請
障害者自立支援法 申請
国土交通省 行政法 道路運送車両法 基準
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 基準
警察庁 行政法 道路交通法 基準
不正アクセス行為の禁止等に関する法律 規制
消費者庁 行政法 個人情報保護法 規制
総務省 行政法 電波法 申請
制度 電波法が定める無線局開局の免許制度
3. 法令集における各法律の概要
3.1 製造物責任法
 製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めた法律だが、「欠陥」については「当該製造物が通常有すべき安全性欠いている」と規定しているのみ。

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3.2 電気用品安全法
 特定電気用品115品目とそれ以外の電気用品339品目を対象とする。対象品目については基準に適合したことを示すPSEマークの表示を義務付けている。
 これらの電気用品安全法が対象とする454品目中には、電線、ヒューズ、配線器具、電流制限器、変圧器・安定器、電熱器具、電動力応用機械器具、電子応用機械器具、交流用電気機械器具、携帯発電機などの電気部品が含まれる。例えば、ロボット専用に、規格品ではない電気部品を採用する場合には、「電気用品の技術上の基準を定める省令」が定める技術上の基準に適合していることを確認しなければならない。特に政令で定める特定電気用品の場合には、該特定電気用品を販売する時までに、経済産業大臣の登録を受けた機関の適合性検査を受けなければならない。特定電気用品(115品目一覧)をみると、要素部品が大半を占めるが、中にはNo.108の電気乗物のような完成品も含まれている。

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3.3 消費生活用製品安全法
 乳幼児用ベッド、携帯用レーザー応用装置などの9品目を対象とする。対象品目については基準に適合したことを示すPSCマークの表示を義務付けている。一方、製品安全協会が審査と検査を行った上でSGマークを交付する制度がある。

【事例】ハンドル形電動車いすのJIS規格の改正に向けた検討
 製品事故情報報告・公表制度が平成19年5月より施行されてからこれまでに、ハンドル形電動車いす乗車中に転落したこと等による重大製品事故としての報告を30件受付けている。こうした事故を防ぐためには、操作ミスを起こしにくい製品の開発や普及が一つの有効な対策であることから、メーカ、利用者等の様々な意見を踏まえつつ、適切な安全基準を設定するとともに障害者等の利便性にも配慮したJIS規格の改正に向けた検討を進めてきた。具体的には、ハンドル形などの電動車いすの基準を定めているJIS T9203から、ハンドル形の規定を抜き出し、内容を見直して新たにJIS T9208として制定することとし、日本工業標準調査会の高齢者・障害者支援専門委員会において審議を行い、制定/改正案が承認された。対象品目指定については経済産業省にて検討中。

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3.4 労働安全衛生法
 労働安全衛生法は、事業者が労働者の安全を守ることを基本概念としている。産業用ロボットの安全性確保については、労働安全衛生法第28条第1項の規定に基づき、「産業用ロボットの使用等の安全基準に関する技術上の指針」が公表されている。この指針では、産業用ロボットの選定、産業用ロボットの設置、産業用ロボットの使用、定期検査等、教育等について規定している。

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3.5 薬事法
 新しく開発された生活支援ロボットを保険診療に使用できる医療機器として認定されるためには、生活支援ロボットが薬事法による医療機器としての承認を受けると共に、その生活支援ロボットを医療機器として用いる新しい診療技術が保険適用されて、保険点数表に記載される必要がある。
 本章では、まず、生活支援ロボットが薬事法による医療機器としての承認を受けるための承認審査の流れを説明して、次に、承認を受けた生活支援ロボットを医療機器として用いる新しい診療技術が保険適用されて、保険点数表に記載される為の条件を説明する。

【事例】da Vinciサージカルシステムの高度管理医療機器認定
 ロボットが医療機器として承認を受けた最近の事例として、2009年9月に、内視鏡手術器具の操作を支援するロボットユニット「da Vinciサージカルシステム」の事例がある。高度管理医療機器に分類された。

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3.6 介護保険法
 介護保険法は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
 尚、介護保険制度における公的給付は、原則給付額のうちの1割を自己負担としている。保険給付の対象となる福祉用具の範囲は、厚生労働大臣によって定められている。 その具体的な種目は、厚生労働省告示で告示された。
 福祉用具貸与種目は、3年に1回、厚生労働省老健局が事務局を務める委員会で決定される。貸与にあたっては、介護認定を受けた被介護者が介護支援専門員(ケアマネージャ)によりケアプランを作成してもらい、市長村の認定を受けることで貸与が可能となる。

【例示】福祉用具申請(貸与種目の追加申請、介護保険の利用者申請)
 介護保険法に基づく福祉用具貸与種目は、3年に1回厚生労働省老健局が事務局を務める委員会で決定される。
 尚、貸与にあたっては、まず、被介護者が市区町村の介護保険課で要介護度の認定を受けて、ホームヘルプサービス(居宅介護支援)事業所の紹介を受ける。次に、ホームヘルプサービス事業所に行き、ケアマネージャ(介護支援専門員)の紹介を受ける。紹介を受けた(ケアマネージャ)が、1カ月のケアサービス(介護サービス)計画を作成して1カ月のケアサービス費用を計算する。ケアサービス費用には、福祉用具のレンタル料金や購入費の他、ホームヘルパによる訪問介護サービス費などが含まれる。ただし、要介護度毎に1カ月の給付限度額が決められている。作成した1カ月のケアサービス計画を、市区町村に認定されると貸与が可能となる。要介護度に応じたケアサービス限度額が決められていて、この金額を超えるサービスを利用した場合は、利用者が超過分を負担することになる。福祉用具の給付は、原則として1割を自己負担とされているので、9割が給付される。

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3.7 障害者自立支援法 (注)
 この法律は、障害者基本法の基本的理念にのっとり、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、児童福祉法、その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

【例示】補装具の申請方法(補装具完成用部品指定申請)
 補装具とは、身体機能を補完、代替するもので、日常的に活用されると共に、選定に際して医師の判断を要するものとされている。具体例としては、電動車いす、歩行器、重度障害者用意思伝達装置、義手、義足、上肢/下肢装具、座位保持装置、盲人安全つえ、補聴器などがある。これらの中で、義肢、装具、座位保持装置の完成用部品についてのみ、完成用部品指定の申請手続きがある。その他の補装具は、厚労省の専門委員会で審査を行い、給付に値するか否かを決定する。この専門委員会は、メーカが新規に開発した補装具の審査の応募を受け付けている。生活支援ロボットについては、厚労省の補装具評価検討会にて、今後新しい種目の検討が行われる可能性もあるが、2010年6月現在は検討されていない。

【例示】日常生活用具の申請方法(利用者申請のみ)
 対象となる日常生活用具の具体例としては、特殊寝台、移動用リフト、移動・移乗支援用具、聴覚障害者用屋内信号装置、居宅生活動作補助用具設置に伴う住宅改修費などがある。介護保険制度を適用できる場合には、原則として介護保険制度を優先される。ただし、オーダーメイド等により個別に製作する必要があると判断される者である場合には、市町村が更生相談所に相談し、更生相談所の判定等に基づき、補装具費支給制度により費用を支給されることになっている。
 ただし、日常生活用具については、メーカが公的給付制度の対象とする為の申請手続きが用意されていない。メーカと障害者が話し合い、利用者申請の手続きをバックアップすることにより、新規に開発した機器を日常生活用具として認められるケースがある。さらに、厚生労働省に、種目や解釈通知の変更申請を行うこともできる。

(注)
障害者自立支援法は、2013(平成25年)1月より「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための
法律」(通称・障害者総合支援法)に名称が変わりました。

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3.8 道路運送車両法
 道路運送車両に関し、所有権についての公証等を行い、並びに安全性の確保及び公害の防止その他の環境の保全並びに整備についての技術の向上を図り、併せて自動車の整備事業の健全な発達に資することにより、公共の福祉を増進する。

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3.9 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
 デパートやスーパーマーケット、ホテル、学校、事務所、共同住宅など、多数の者が利用する建築物を「特定建築物」と位置づけ、その建築主は、建物の出入口や階段、トイレなどに、障害者が円滑に利用できるような措置を講じるよう努めなければならないとされている。併せて、特定建築物のうち、不特定多数の者又は主に高齢者や身体障害者等が利用するものを「特別特定建築物」と位置づけ、これらを新築等する場合には、利用円滑化基準に適合することが義務付けられた。

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3.10 道路交通法
 道路交通法は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。道路交通法では、歩行者の通行方法や車両及び路面電車の交通方法、運転者の遵守事項、道路における禁止行為などの交通規則、自動車の運転免許に関する様々な規則等を定めている。
 道路交通法では、車両や歩行者が通行する道路を、車道や歩道などとして区別している。また、歩行者を、身体障害者用の車いす、歩行補助車、二輪車等を押して歩いている者と定義している。
 そして、車両や歩行者の通行区域を、横断歩道や交差点などとして区別している。車両を自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスとして区別している。車両の詳細な定義を道路交通施行規則(総理府令)で規定している。この定義の中に、身体障害者用の車いすの大きさ、構造、速度について、原動機付自転車の総排気量の大きさ等が規定されている。

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3.11 不正アクセス行為の禁止等に関する法律
 生活支援ロボットの多くは、ネットワークに接続して必要な情報を得ている。そこで、生活支援ロボットはネットワークに対する不正アクセス行為の被害を受ける危険性がある。不正アクセス行為により想定される被害の具体例としては、例えば、サービスシステム(プログラムやデータベース)の破壊や、ユーザの個人情報の漏洩ばかりでなく、家庭内でユーザと一緒に行動する生活支援ロボットの遠隔操作による障害などがある。

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3.12 個人情報保護法
 生活支援ロボットの多くは、ネットワークに接続して必要な情報を得ている。そこで、ネットワークを経由して、生活支援ロボットがセンシングしたユーザの個人情報が漏洩する危険性がある。本法律は、高度情報通信社会の進展の下、個人情報の流通、蓄積及び利用の著しい増大にかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し基本となる事項を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する。

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3.13 電波法
 生活支援ロボットとオペレータが無線通信を行う場合や、生活支援ロボット同士が無線通信を行う場合には、通信回線の信頼性を高めることが求められる。特に、生活支援ロボットの緊急停止等の安全に関わる信号を通信する場合には、通信回線の信頼性を確保することが重要である。通信回線の信頼性を確保するために、その信頼性を低下させる原因であるノイズ(通信回線に混入する雑音電波)を低減することが課題となる。主なノイズ源は、他の通信に使われる電波なので、できれば専用の通信回線を確保することが望ましい。専用の通信回線を確保するためには、総務省に申請して、専用の周波数帯域を割当てもらう必要があるが、現状では困難な状況にある。そこで、既存の周波数割当計画に従って、複数の無線局が共同利用している周波数帯域を利用する。共同利用される帯域の中で、無線局同士が、電波干渉を避けるように、通信回線の利用方法(通信チャネルの周波数帯域や通信方式など)をさらに細かく取り決めることが現実的な対応方法となっている。
 本章では、生活支援ロボットが非常信号等に利用する無線通信に対する電波法による規制を整理する。

【例示】総務省の周波数割当計画
 生活支援ロボット普及時に利用すべき通信方式は、総務省の周波数割当計画に従わなければならない。この計画では、既にあらゆる周波数が用途毎に割り当てられているため、生活支援ロボット専用の帯域を確保することは困難である。周波数割当計画で9KHz~275GHzくらいまで細かく使い方を決めており、例えば、無線LANを防災無線の帯域で使うと電波法違反になる。実際に開局手続きを行う際には、無線設備規則に定められた技術基準の分類に従い、個別に判断を行う必要がある。
 生活支援ロボットの無線通信は、通常は、微弱無線局でISMバンド(2.4GHz近辺)を利用することになる。ISMバンドは、産業科学医療用バンドと言われており、国際電気通信連合(ITU)により、産業、科学、医療用として利用するために指定された周波数帯である。ISMバンドを利用する場合には、技術基準適合証明を受けた通信機器の利用を義務付けられているが、無線局の開設手続きは不要となる。ただし、電波利用料が発生する可能性がある。

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